いただけません
1995年1月阪神大震災の時、関西の家庭料理のっぺ汁を炊き出しのボランティアで出した田北さんという大阪の社長さんがいた。のっぺ汁はダイコンやニンジンなどの根菜をしょうゆ味で煮込んだ料理である。1月の寒さに暖かい汁物。のっぺ汁を出した神戸市内の高校で自衛隊員が入浴の支援活動をしていた。
「ごくろうさまです。よかったらどうぞ。」
「ありがとうございます。でもこれは我々のためのものではないので、いただけません。」
北海道旭川から来ていた自衛隊員だった。今誰のためにその場にいるのか、誰のために作られた炊き出しなのか、被災者を第一に考えられたその答えが忘れられず、田北さんはいつかお礼にのっぺ汁をごちそうしたいと考えていた。 イラクへの自衛隊派遣の主力部隊が旭川の部隊だと聞き田北さんは手紙を出した。震災から9年、田北さんと一緒に支援活動をした隊員たちは異動して今はいないという。 それでも田北さんは今度こそと思っている。こう話してくれた。
「無事に帰ってきた隊員たちに汁を食べてもらえば、私の願いはかなえられます」
黄色いハンカチへの想いと同じ想いで田北さんは隊員たちの無事の帰りを待っている。
2004年2月2日北海道新聞夕刊の「まど」というコラム(西田真一朗さん記)から紹介した。
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